太陽光発電の普及と普及推進策に関する考察
12.05.06更新41版(08.08.24新設)

我が家ではオール電化(エコキュートとIHクッキングヒーター)&太陽光発電をリフォームで導入しました。
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 10.「再生可能エネルギー特措法」と「平成24年度 住宅用太陽光発電導入支援復興対策費補助金」に関する考察
(12.05.06執筆New!

 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(以下、「再生可能エネルギー特措法」という)が平成24年7月1日に施行される。また、4月19日から、「平成24年度 住宅用太陽光発電導入支援復興対策費補助金」の募集が開始された。

 私は、この二つの制度はセットで論じられるべきと考えるので、ここで両者合わせて考察したい。

 まず、「再生可能エネルギー特措法」は、いわゆる『全量固定価格買取制度』の基になる法律で、実用化された再生可能エネルギーである太陽光発電(発電事業用まで拡大)、風力発電(小型も含む)、中小水力発電(3万kW以下)、地熱発電、バイオマス発電(紙パルプ等他の用途で利用する事業に著しい影響がないもの)など、様々な発電方式に関するものであるが、このサイトを訪れる方の大部分は住宅用太陽光発電システムの導入を検討されているものと考え、
ここでの詳しい考察は、住宅用太陽光発電(10kW未満)に限定する

 『全量固定価格買取制度』の詳細は、調達価格等算定委員会の資料

  
http://www.meti.go.jp/committee/chotatsu_kakaku/007_haifu.html

を参照して頂きたい。


 なお、『全量固定価格買取制度』全体に対する感想としては、住宅用太陽光発電以外に関して、平成23年3月以前まで議論されていた内容に比べると、
かなり事業として参入しやすい買取価格・買取期間が提案されているように思う。
 逆に、住宅用太陽光発電(10kW未満)だけが、買取期間の点で不利であり、取り残されてしまった感が無きにしも非ずである。
 これは、平成23年3月の原発事故を期に、再生可能エネルギーを事業として成り立たせ、電力不足を回避しなければならない状況が生じたからであると考える。また、従来、再生可能エネルギーの固定買取に消極的だった原発推進派の発言力が弱まったのも大きな要因と考える。
 この政策は、
新規事業者を増やす効果は大きそうだが、逆にサーチャージ(=需要家負担)が増えすぎないかが今後の新たな不安材料である。
(ちなみに、2012年度のサーチャージ額の試算値は約0.2円/kWhから約0.4円/kWh程度で、2011年度の約10倍程度になりそう。といっても燃料調整費と同程度だが・・・。)


 それでは、本題の住宅用太陽光発電について考察する。

 考察すると言っても、実はそんなに大層なものではない。
 基本的に、住宅用太陽光発電(10kW未満)については、従来からの
『余剰電力固定買取制度』がほぼ踏襲されるようだ。

 主な理由は、

 1)余剰買取から全量買取にした上で、サーチャージ(需要家負担)を維持
  するには、買取価格を下げる必要があり、インセンティブが低下する。
 2)余剰買取を継続することにより、節電意識の向上効果が期待できる。
 3)余剰買取から全量買取にするには、100万戸の既設システムの電力計
  及び接続を変更しなければならない。(コスト:約1000億円)


 既に、余剰買取契約しているシステムについては、契約時から10年間、従来通りの余剰電力買取価格で買取が行われると予想される。
(ここで、『契約申込』とは電力会社に対する買取契約の申込を意味する)

 ・0年目:平成21年11月〜平成22年3月に契約申込 → 制度の前倒し
     
48円/kWh(ダブル発電の場合、39円/kWh) × 10年間

 ・1年目:平成22年4月〜平成23年3月に契約申込
     
48円/kWh(ダブル発電の場合、39円/kWh) × 10年間

 ・2年目:平成23年4月〜平成24年3月に契約申込
     
42円/kWh(ダブル発電の場合、34円/kWh) × 10年間

 制度の
変更によって大きく変るのは、3年目以降の買取価格だけと言っても過言ではないだろう。

 従来の『余剰電力固定買取制度』では、『買取小委員会』にて、システム導入コストの動向を反映させた固定買取価格を毎年見直すことになっていた。

 システムの購入価格は徐々に下ってきており、1年目の48円/kWhに対して、2年目は42円/kWhに減額された。(0年目は制度の前倒しなので、0年目から1年目にかけての変更はなかった) 
従来の制度であれば、3年目(平成24年4月〜平成25年3月に契約申込)の買取価格は、2年目の42円/kWhより低く設定された可能性が極めて高い。(約36円/kWhではないかとの予想もあった)

 しかし、7月1日から新しい制度(新しい買取価格)に移行するため、
4〜6月のわずか3ヶ月だけを対象とした買取価格を決めるのは混乱を招くとの理由で、4〜6月契約申込分は、前年と同じ「42円/kWh × 10年間」に据え置かれた。

 さらに、
7月1日以降の買取価格は、再生可能エネルギー特措法によって、
     
42円/kWh(ダブル発電の場合、34円/kWh) × 10年間
と定められた。

 新しい制度においても買取価格は不変ではなく、状況に応じて見直しが行われるようではあるが、とりあえず、
いわゆる『余剰電力固定買取制度』3年目(平成24年4月〜平成25年3月に契約申込)の買取価格は、2年目と同額に据え置かれたのである。

 私は、この
買取価格の据え置き(新しい制度なのだから新たに決めたのだという見方もあるかもしれないが、私から見ると『余剰電力固定買取制度』の継続なので、敢えて『据え置き』と表現する)を評価している

 もしも、今年度の買取価格が36円/kWhになってしまったら、設置者にとって魅力のないものになり、導入意欲が大きく低下することが懸念されたからである。以下、もう少し詳しく述べる。

 契約している料金コースにもよるが、例えば私は東京電力の「おトクなナイト10」という料金コースで契約しており、昼間の電力料金は、第1段料金(80kWhまで)が23.87円/kWh、第2段料金(80kWhを超え200kWhまで)が30.74円/kWh、第3段料金(200kWh超)が32.48円/kWh、となっている。
 電力消費量が多いときの自家消費単価は第3段料金(200kWh超)と同額の32.48円/kWhになるので、余剰電力の買取価格が36円/kWhになってしまったら、自家消費単価と大差ない。
 さらに、この7月から東京電力の家庭用電気料金が約10%値上がりすると言われており、そうなると益々『自家消費電力に対して余剰電力を高く買い取られている』感が無くなり、設置者のメリットは『余剰電力固定買取制度』導入以前とあまり変らなくなってしまうのだ。

 上記理由で、私は買取価格40円代/kWhは当面死守すべき水準と考えていた(もちろん、「未来永劫そうだ」とは言わない)ので、
42円/kWh据え置きを評価しているのである。


 以前の『買取小委員会』の議論では、太陽光発電の導入促進は
補助金(財政負担)を主たる政策とし、買取価格(→サーチャージ=需要家負担)は極力抑えるべきとの観点で、システム導入価格を3〜5年で半額にすることを前提に、固定買取価格はシステム導入価格の低下に伴って早急に減額すべきとの考え方が大勢を占めていたように思う。
 しかし、「再生可能エネルギー特措法」の成立によって、考え方の方向性が変ってきたようだ。その理由は、太陽光発電だけでなく再生可能エネルギーによる電力を幅広く全量買取するとなると、
買取価格(→サーチャージ=需要家負担)が主たる政策で、補助金(財政負担)が従たる政策にならざるを得ないからではないかと考える。

 経済産業省が公表している資料にも、下記のような記載がある。

  
http://www.meti.go.jp/main/yosan2012/120419energy_2.pdf

  再生可能エネルギー利用の抜本的拡大については、
固定価格買取制度
  (平成24年7月1日開始)の導入を踏まえ設備設置者側への補助を
  絞り込み
(23年度:716億円→24年度:389億円)。一方、
  再生可能エネルギーの導入拡大や、産業・雇用を創出する観点からも
  重要な研究開発について大幅に拡充(23年度:356億円→24年度
  :441億円)。

 
固定価格買取制度の導入を踏まえ、補助金の予算規模は前年の約55%に減っているのだ。



 さて、そこで、今回のもう一つの考察対象である「平成24年度 住宅用太陽光発電導入支援復興対策費補助金」に話はつながっていく。

 平成24年度の補助金制度の詳細については、

 http://www.j-pec.or.jp/news/t12041801.html
 
http://www.j-pec.or.jp/subsidy_system/system.php

及び、J-PECサイト内の関連資料をご参照いただきたい。

 概要は以下の通り。

 募集期間    : 平成24年4月19日〜平成25年3月29日(消印有効)
 価格条件と補助金額:
1kW当たりのシステム価格(税別) 1kW当たりの補助金額
3.5万円を超えて 47.5万円以下 3.5万円
47.5万円を超えて 55.0万円以下 3.0万円

 前年度は『想定件数』が示されていたのだが、今年はその記載がない。1件当り何kWのシステムが想定されていて、何件程度が補助金の対象になるのか良く分からない。

 予算規模を389億円、1件当りの想定設置kW数を前年(約4.6kW)と同程度、補助金額はkW当りの価格によって異なるが、ざっくり平均を取って、32,500円/kWと仮定すると、
想定件数は約26万件と推測される。

 前年度の申請受理件数(本予算+補正予算)が約30万件であるから、今年度は本予算だけだとすると
約4万件少なくなり、補助金もkW当り13,000〜18,000円減額になっているので、補助の規模としては大きく後退している。
 しかし、上述の
買取価格の据え置きと組み合わせて考えると、私はあながち悪い方向ではないと思う。

 補助金10,000円/kWは、10年間の買取価格何円に相当するのだろうか?
ここで、計算を簡単にするため、1KW当りの年間発電量を1000kWh(1000倍の法則)、売電率を60%と仮定する。システム1kW当りの10年分の売電量を求めて、10000円を除算すると、

 1000kWh × 0.6 × 10 = 6000kWh
 10,000円 ÷ 6000kWh ≒ 約1.7円/kWh

 補助金10,000円/kWは、10年間の買取価格、約1.7円/kWhに相当する。
逆に言うと、買取価格1.0円/kWhは、補助金額6,000円/kWに相当する。

 もしも、平成24年度の買取価格が42円ではなく36円だったら、その差6円は補助金額約36,000の減額に相当する。それが据え置かれて補助金額が13,000〜18,000円の減額であるから、
補助金額が据え置かれて買取価格が6円下るよりはマシだったと考えられる。
(決して、補助金額が十分だと言っているわけではないが・・・。)


 さて、平成24年度の補助金制度で、私が一番気になるのは、
1kW当りのシステム価格の条件である。

 平成20年度の第4四半期に補助金が復活した時から、
1kW当りのシステム価格の条件が設定され、徐々に条件が厳しく(価格が低く)なってきた

 平成20年度 補助金0年目:7.0万円/kW (税抜70.0万円/kW 以下)
 平成21年度 補助金1年目:7.0万円/kW (税抜70.0万円/kW 以下)
 平成22年度 補助金2年目:7.0万円/kW (税抜65.0万円/kW 以下)
 平成23年度 補助金3年目:4.8万円/kW (税抜60.0万円/kW 以下)
 平成24年度 補助金4年目:3.0万円/kW (税抜55.0万円/kW 以下)
                  3.5万円/kW (
税抜47.5万円/kW 以下

 平成23年度までは、
税抜5.0万円/kWずつ下ってきている。
 さらに、平成24年度は、3.0万円/kW (税抜55.0万円/kW 以下)と3.5万円/kW (
税抜47.5万円/kW 以下)の2段階に分かれた。

 
1kW当りのシステム価格の条件が、市場価格の低下を誘導した効果を全面的に否定するつもりはない。一定の効果はあったと考えている。しかし、以前から疑問を呈していたように、そもそも、補助金の申請受理条件で市場価格を誘導してしまって良いのだろうか?
 本来ならば、補助金によって市場を拡大させ、大量生産・大量販売の効果によって(市場原理で)価格が低下するのがあるべき姿なのではないかと思う。
 しかも、
税抜5.0万円/kWずつの低下だったのが、ここに来て一気に12.5万円/kWという大幅な条件の変更である。

 設置者にとって、価格は安いに越したことはないし、メーカー、販売業者、施工業者にはコストダウンに努めて頂きたいと思う。
 しかし、補助金の申請受理条件を使って力ずくで下げようとする手法は賛成しかねる。懸念点は以下の通り。

  1) 
2段階の基準があることで、市場が混乱するのではないか?
  2) 過当競争により、『施工の安全・安心』がおろそかにならないか?
  3) 
『税抜47.5万円/kW 以下』に対応できない業者が潰れないか?
    (この基準自体が妥当なのか?)
  4) 補助金が無くなった時に、反動で価格の上昇を招かないか?
    (最近の経産省の資料に「補助金は5年間の約束」との記載があった。
     そんな約束があったという認識は無いが、もしそうなら、今年度か
     来年度で補助金は終了することになり、価格を誘導できなくなる。)


 そもそも、なぜ、補助金の申請受理条件に
『1kW当りのシステム価格』を設定し、市場価格の低下を誘導しなければならないのか?
 ここでまた、『買取制度』の考え方に話を戻す必要がある。


 住宅用太陽光発電の補助金が復活し、『余剰電力固定買取制度』が導入された当初、経済産業者・資源エネルギー庁、及び、買取小委員会では、
システム導入価格を3〜5年で半額にすることを前提に、以下のようなシナリオを描いていた。

 
http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004601/013_02_00.pdf

 平成21年度 余剰買取0年目:48円/kWh
 平成22年度 余剰買取1年目:48円/kWh
 平成23年度 余剰買取2年目:42(-6)円/kWh
 平成24年度 余剰買取3年目:36(-6)円/kWh
 平成25年度 余剰買取4年目:30(-6)円/kWh
 平成26年度 余剰買取5年目:24(-6)円/kWh → 電力販売価格と同等


 そう、全ては
『システム導入価格を3〜5年で半額にすることを前提に、固定買取価格は早急に減額すべき』という、市場を無視した考え方が根源なのだ。

 ちなみに、補助金制度が復活して既に3年経過したが、システム導入価格の平均値は、補助金復活前の半額にはなっていない。3年で半額なんて、最初から出来るはずはないと思っていたが・・・。(5年間=あと2年でも無理だと考えている)


 下のグラフは、補助金の対象になったシステムの1kW当りの価格の推移を示している。

 【出典】  
http://www.j-pec.or.jp/information/data.html
        の「交付決定件数・設置容量データ」


 緑色の線は補助金の価格条件を示しており、
5.0万円/kWずつ下っている。
 赤色の線は、平成24年度の補助金条件の一つ
『47.5万円/kW』である。


 当初価格の基準をどこに置くかによるが、例えば、補助金復活前の『既築住宅への設置』の平均システム価格は、『約70万円/kW』と言われていた。この半分とすれば、目標は『
約35万円/kW』だが、現在は約75%に当る『52.3万円/kW』である。
 あるいは、補助金復活直後の全体の平均値『62.1万円/kW』を基準とすれば、その半分の『
約31.1万円/kW』が目標だが、現在はその約84%にあたる『50.1万円/kW』である。

 いずれにしても、半額には程遠い。


 しかし、私としては、緑色の線を上限として、

 
十分順調に価格が下ってきている

 と思う。


 ところが、いきなり、赤色の線(
47.5万円/kW)が乱入(?)してきた。この価格は現在(平成23年度第4四半期時点)の全体の平均値よりも低い水準である。
 「
モデルケースは新築住宅への設置だから、上限値である」などという屁理屈が聞こえてきそうだが、平成22年度も、平成23年度も、既築:新築≒3:1だった。
 既築住宅への設置が依然として主流であり、「
モデルケースは新築住宅への設置」という現在の制度設計の前提は明らかに間違いだ。

 私は、「平成24年度 住宅用太陽光発電導入支援復興対策費補助金」において、『3.5万円/kW (
税抜47.5万円/kW 以下)』の価格条件を設けることに反対である。
 度を越した価格条件によって、市場に混乱が発生しないことを切に願うばかりである。



 
『システム導入価格を3〜5年で半額にすることを前提に』というのは、太陽光発電の導入促進は補助金(財政負担)を主たる政策とし、買取価格(→サーチャージ=需要家負担)は極力抑えるべきとの観点に立った、3年前の考え方に基づいている。(その考え方自体も当時から大いに疑問だったが・・・)
 法律も制度も変った今、同じ前提を引きずり続ける必然性は既に無くなったのではないだろうか?

 『余剰電力固定買取制度』の良い点を残しつつ、不適切な点は改善しながら、より良い制度を構築していって欲しいものである。

(2012.05.06)

 

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