太陽光発電の普及と普及推進策に関する考察
12.05.06更新41版(08.08.24新設)

我が家ではオール電化(エコキュートとIHクッキングヒーター)&太陽光発電をリフォームで導入しました。
導入過程の重要ポイント、経験して初めて知った事など、体験談をご紹介します。

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上記広告主について、必ずしも管理人がその良否を確認できておりません。購入・契約の際にはご自身の責任でご判断ください。
「自己責任」の心の準備が出来ていない方にはクリックすることをお勧めしません。



 9.民主党の『太陽光発電普及推進策』に関する考察
(09.09.28執筆、09.11.08加筆、09.12.13加筆、09.12.28加筆
10.04.12加筆、10.04.19加筆、10.05.04加筆、10.05.12加筆、
10.05.25加筆、
10.06.27加筆、10.08.01加筆10.11.07加筆

 政権を取った民主党のマニフェストには、太陽光発電だけでなく、風力発電などを含めて『全量固定買取制度』が掲げられている。

 ここでは、
住宅用太陽光発電の普及推進策に絞り、それ以外の再生可能エネルギーについては、とりあえず横に置いて考察していきたい。

 直嶋正行経済産業相は、「余剰電力を想定した固定価格買取制度」を予定通りスタートさせ、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー全般を対象とする固定価格買取制度について「できるだけ早く議論して制度設計して実行したい」との考えを示した。具体的な実施時期については「なるべく2年以内に、という気持ちは持っている」と語った。

 とのことで、11月からの余剰電力買取制度は予定通りスタートするようだ。
 マニフェストの早急な実施に拘らず、現実路線を選んだことを歓迎する。

 『太陽光発電以外も含めた全量』固定買取制度の設計に時間がかかると考えているようで、ちょっと安心した。

 しかし、『全量固定買取制度』を本当に2年後に実施できるのだろうか?
 また、『余剰電力固定買取』を『全量固定買取制度』に変えることで、住宅用太陽光発電の普及にどのくらいの効果があるのだろうか?


 『全量買取』を実施するためには大きな課題がある。

 11月から始まる今回の制度が発表(2月)から僅か9ヶ月で実施に漕ぎ着けることができたのは、
計量法やグリーン電力との整合性に踏み込まずに済む「余剰電力」に限ったからだと考える。だからこそ、電力会社の協力も得られたのではないだろうか?

 『全量買取』は、制度設計自体が難しい上に、その制度を実施するために実行しなければならない施策も多い。


1)計量法との整合性

 何かを取引する際の計量には、計量法に準拠した精度の計量器を使うことが義務付けられている。現在、余剰電力を買い取る際の売電メーターは計量法に準拠したものであり、電力会社がそのメーターの値を基に余剰電力を買い取ることは、計量法上、何ら問題はない。

 しかし、全量買取となると、
『発電量』を計量法に準拠した計器で量る必要が出てくる。太陽光発電メーカーが販売している、いわゆる発電モニターは計量法に準拠していないので、発電モニターの示す値を以って電力を売買することは、計量法上許されていない。

 従って、何らかの処置が必要になる。

 一番単純に考えれば、全ての太陽光発電に
計量法に準拠した発電量計を設置するということだ。新たな電力量計を設置しなくても、配線を変えればよいという説もある。いずれにしても、太陽光発電が既に設置されている約50万戸に何らかの工事が必要となる。

 その
何らかの工事の費用はどのくらいかかり、誰が負担するのか?
 また、
約50万戸の工事を終了するのにどのくらいの時間がかかるのか?


 別の方法も考えられる。「
再生可能エネルギーには計量法を適用しないという法律を作ってしまうのだ。私自身、再生可能エネルギーだけを特別扱いするのはいかがなものかと思うし、各業界からの反発は必至だろうが・・・。

 仮にそのような法律が成立して、いわゆる発電モニターの値が使えるとしても、今度は検針が大変だ。売電メーターは、買電メーターと共に屋外に設置されているから、検針員は家人が留守だろうがメーターを見ることができる。

 しかし、いわゆる発電モニターは屋内に設置されている。毎月、検針員が屋内まで入って検針するのか、あるいは設置者の自己申告なのか、毎月発電モニターの写真を撮って送るのか・・・? 
電力会社はどうやって発電量を把握するのだろうか? その運用が難しいと思う。



2)自家消費分のグリーン電力証書との整合性

 全量固定買取する場合、自家消費分の環境価値も買い取られることになると考えられるので、現在売買されている自家消費分のグリーン電力証書は環境価値のダブルカウントになり、存在が許されなくなるのではないだろうか?
つまり、「
全量固定買取=自家消費分のグリーン電力証書の廃止」になるのではないかと考える。

 この影響は甚大だ。グリーン電力証書の認証や売買代行を行っている企業や団体は潰れるかもしれない。

 東京都の太陽光発電に対する助成策も根底から覆る。東京都の補助金は自家消費分の環境価値の譲渡と引き換えに補助金を支給し、その環境価値を企業などに売って新たな助成策の財源にする構想だ。その前提となる「自家消費分のグリーン電力証書」が無くなってしまうかもしれない。

 例えば、
自家消費分のグリーン電力証書を既に保有しているが、まだ販売できていない人がいたとしよう。自家消費分のグリーン電力証書制度が無くなると、ただの紙切れになってしまう。その財産権はどうなるのだろうか?

 以上のように、『余剰電力限定』から『全量』に変更する場合、
太陽光発電の環境価値の扱い方自体の見直しが必要で、それに伴う利害関係者も非常に多く、反発も増えると予想する。その調整は並大抵ではないだろう。



3)『全量買取』の普及推進効果は?

 今回の『余剰電力買取』制度が11月から始まることで、太陽光発電の普及に火がついたと思われる。それを『全量買取』に変えたところで、どのくらいのプラス効果が見込めるのか疑問だ。

 たとえば、『全量買取』になったけれど、単価は『余剰電力買取』よりも安くなってしまったのでは、設置者から見て魅力はない。自家消費分のグリーン電力証書制度が無くなって、東京都の助成制度が頓挫したら、普及推進に水を差しかねない。

 私としては、『全量買取』に多大な労力をかけるよりも、『余剰電力買取』のままで、前記のような修正をしていく方が、普及推進効果の高い制度を、はるかに早く実施できるのではないかと考える。繰り返しになるが、

  1)買取期間をもっと長くする(12〜15年程度)
  2)買取単価の低減をもっと緩やかにする(7〜10年で半額)
  3)固定期間終了後の単価を購入電量料金と同等にする

 の3点の変更である。


 とにかく、新政権は「始めに『全量買取』ありき」ではなく、『全量買取』と『余剰電力買取』の得失を良く比較した上で、時間と手間と金がかからないで普及推進効果の高い制度を実施して欲しいと思う。

「再生可能エネルギーの全量買い取りに関するプロジェクトチーム」
発足!(09.11.08)


 民主党のマニュフェストを受けて、「
再生可能エネルギーの全量買い取りに関するプロジェクトチーム」なるものが発足し、09/11/06に1回目の会合が持たれた。(詳しくは、 http://www.meti.go.jp/topic/data/091027aj.html )

 メンバーは、以下の通り。

 ・増子副大臣、近藤政務官が主として担当し、政務三役が参加。

 ・有識者としては以下の
5名。
   柏木
孝夫 東京工業大学統合研究院教授
   金本 良嗣 東京大学大学院経済学研究科教授
   山内 弘隆 一橋大学大学院商学研究科教授
   山地 憲治 東京大学大学院工学研究科教授
   横山 明彦 東京大学大学院新領域創造創成科学研究科教授

 ・事務局は資源エネルギー庁。


 「あれれ? 電力会社、電力を多く消費する企業、消費者団体などの利害関係者が全く含まれていないけれど、大丈夫なのかな?」
 と最初は疑問に思ったのだが、

 「
再生可能エネルギーの全量買取に関するご意見の受付について

 によると、広く意見を公募し、一部からは公開でヒアリングを行うらしい。
 ある程度の案がまとまった段階ではなく、初期段階で意見募集を行うというプロセスを取ることは評価したい。意見募集は、

 ・ヒアリングを希望する場合は、平成21年11月19日(木)18:00必着
 ・上記期間以降も随時意見を受け付け、参考とする

とのこと。
(希望する全ての個人・団体が必ずしもヒアリング対象者になるとは限らない)

 「全量買取」に対しては、皆さん、色々なご意見をお持ちのことと思う。Word形式の書式も用意されており、電子メールでの提出も受け付けるので、是非この機会にご自分の意見を出して頂きたい。
 (詳しくは、「 
http://www.meti.go.jp/topic/data/091106aj.html 」)

 意見提出の際には、前述の「再生可能エネルギーの全量買い取りに関するプロジェクトチーム」の1回目会合の
配布資料にも目を通すことをお勧めする。

事業仕分けで平成22年度の補助金が「予算計上見送り」判定!
(09.12.13)

 平成22年度の予算案に計上されていた「住宅用太陽光発電導入支援対策費補助金」(要求額412億円)が事業仕分けの結果、「予算計上見送り」と判定された。

 業界団体を経由した制度設計が高コストというのが主な理由らしい。
「J-PECの事務的な経費を削減しろ」というのは理解できる。
しかし、だからと言って補助金政策自体を否定するのはいかがなものか?

 事業仕分けで大きな話題になった「スパコン予算」にしても「天下りがあるからダメ」という非常に乱暴な議論をされている。
 ノーベル賞受賞者の方が「天下りがあるからダメというのなら、天下りを無くせばよい。その辺の仕分けこそしっかりやって欲しい」と仰っていた。
全く同感である。

 ちょっとでもムダが含まれていれば、その事業全体がムダという判定を下して良いのだろうか? 太陽光発電の補助金は本当に要らないのか?

 経済産業省の高橋千秋政務官は「事務費の見直しも含めて、新しい枠組みで、12月の予算要求までに出し直したい」と述べており、補助金予算復活を目指しているようだ。


 この、「予算計上見送り」の影響か、平成21年度補正予算分の補助金への申請が急増している。
 しかし、既に納期が遅れ気味のところに注文が急増したら、さらに納期がかかってしまう恐れがある。電力会社の立会いもアップアップの状態だ。
工事完了(申請日から90日)が間に合わなくて、補助金をもらえなくなるケースが増えることが懸念される。
 また、補助金の申請が急増していることを理由に契約を急がせる販売業者も増えてきているようだ。困った事態である。



 さて、そこで・・・。これから太陽光発電を導入しようと考えている方々、業界の方々、さらには太陽光発電の普及を願う方々にご提案したい。

 「補助金予算復活すべし」と政府にメールを出そう!


 私も、もう少し早く気付けばよかったのだが、経済産業省のHPに、
 「経済産業省の予算事業に関するご意見の募集」というページがある。
 ( 
http://www.meti.go.jp/topic/data/091120aj.html )

 そこでは、事業仕分けの対象となった事業に対する意見を募集している。
 「ちょっと後手に回ったかな?」とも思うが、今からでも意見メールを送り、予算復活への「世論」を伝えよう!

 メール送付先:
shiwake-iken@meti.go.jp


 「それだけでは手ぬるい!」とお考えの方は、

 ・直嶋正行経済産業大臣のHP( 
http://www.naoshima.com/ )の
  ご意見メール: 
info@naoshima.com 


 ・首相官邸のHP( 
http://www.kantei.go.jp/ )の
  ご意見募集( 
http://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html )


 にメールするという手もある。



 最後に、個人的な考えだが、「高速道路の無料化は本当に必要なのか? 費用対効果はどうなのか?」こそ、是非とも事業仕分けをして欲しいものである。

平成22年度予算の補助金が復活!
(09.12.28)

 事業仕分けで『予算計上見送り』と判定された、平成22年度予算の補助金がどうやら復活したようだ。予算額は412億円から401億円に減額。11億円分の事務費がムダだった、ということなのだろうか?

 11億円分の事務費を削減して通るのものならば、『予算計上見送り』ではなく、最初から『予算減額』と判定すれば良かったのではないだろうか?

 私には、復活しそうなものまで『予算計上見送り』と判定して、事業仕分けの成果を大きく見せるための単なるパフォーマンスだったように思えてならない。

 結果的に復活したから良いじゃないか、という意見もあるかもしれない。しかし、『予算計上見送り』と『予算減額』では、市場に与える影響は雲泥の差である。「補助金が無くなる」と「補助金の枠が減る」では、消費者心理が全く違ってくる。

 現に、『予算計上見送り』と判定されてから、補助金申請数の伸びに拍車がかかっているし、掲示板にも「いつ頃までに購入を決めれば補助金枠は大丈夫か?」と心配する質問も書き込まれるし、「今年度の補助金は申請が殺到してすぐに無くなるから」と言って早期契約を迫る業者も出てきている。

 『予算計上見送り』と1ヵ月後の『減額復活』は、政治ショーとしては効果があったのかもしれないが、単に市場の混乱を招いただけだ。


 まあ、プロセスには不満があるが、2009年度の200.5億円の2倍、401億円の補助金予算が2010年度に確保されたことは前向きに評価したい。
 もしかしたら、価格条件(現在、税抜70万円/kW)が厳しくなるのではないか?という懸念もあるが、予算額としては妥当だと考える。

 2009年度の問題点は、価格条件(現在、税抜70万円/kW)を満たすために姑息な手段が使われたと推測されることだ。申請書類の偽造で処分された会社は2社しかなかったが、このサイトの掲示板に書き込まれた見積診断や、メールで寄せられた相談内容から考えると、太陽光発電とオール電化(エコキュート+IH)をセット販売し、太陽光発電の価格を税抜70万円/kW以下にする代わりにオール電化の価格に上乗せするケースがかなり多かったと推測される。

 2010年度は、そのようなことが無いように、消費者に対する広報や防止策の充実に力を入れてもらいたい。

「再生可能エネルギーの全量買取制度に関するオプション」
についての意見募集が始まる!
(10.04.12)、(10.04.19)、(10.05.04)、(10.05.12)、(10.05.25)

 「再生可能エネルギーの全量買取制度に関するプロジェクトチーム」がまとめた「
再生可能エネルギーの全量買取制度に関するオプション」についての意見募集が10.03.31から始まった。

 詳しくは、

  
http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004629/iken100331.html

 に記載されているので、
参考資料も含めて熟読して頂きたい。

 この章ではその内容について(太陽光発電を主眼に)考察したいと思う。



 ところで、本題に入る前に念押ししておきたいことがある。

 現在、太陽光発電の余剰電力に関する固定買取制度が実施されている。
 通常の(他の発電機器が無い場合の)住宅用太陽光発電の余剰電力を、
48円/kWで買い取る制度である。

 「余剰電力だけでなく、全量買取になったらいい!」と言う人の中には、暗黙のうちに
「全量買取制度」=「全量を48円/kWで買い取る制度」が大前提であると思っている人が少なからずいらっしゃるのではないだろうか?

 しかし、ここではっきり言っておきたい。それは「
甘い幻想」である。
 「再生可能エネルギーの全量買取制度に関するプロジェクトチーム」の中でも、電力需要家の負担が増えないように、
全量買取時の単価は余剰買取時の単価より低く設定されることが、大前提として議論されていた。

 それでは、どのくらい低く設定されるのか?
 平均的な余剰電力量と自家消費量の割合は、6:4なのだそうだ。
 その割合を基にして、需要家の負担が余剰だけの場合でも全量の場合でも、ほぼ同じになるように計算しているらしい。

 つまり、余剰電力量の割合が発電量の60%より多い場合(7kW、8kWなど、大容量の場合が多い)には、現行の余剰買取制度よりも実入りが少なくなる可能性も十分に有り得るのだ。

 この章では、そのようなケーススタディも含めて考察していきたい。

(10.04.12)



 それでは、本題に入りたい。まずは制度の内容を把握しよう。

 意見募集の対象資料は、

 「
「再生可能エネルギーの全量買取制度に関するオプションについて」
  
(PDF形式:38KB)

 であるが、この資料が実に分かりにくい。
 特に、太陽光発電に対してどのような制度なのか、これだけ見て分かる人は殆どいないのではないだろうか?

 そこで、 「
参考資料(PDF形式:415KB)」を見てみる。

 「再生可能エネルギーの全量買取制度に関するオプションについて」と「参考資料1」を見ると、以下のように読み取れるかもしれない。

 【制度内容1】
  ケース1:全量買取、新設+既設、20円/kWh   、20年間
  ケース3:全量買取、新設のみ 、15〜20円/kWh、15〜20年間
  ケース4:余剰のみ、新設のみ 、15〜20円/kWh、15〜20年間
  ケース5:余剰のみ、新設のみ 、15円/kWh   、15年間

 しかし、「参考資料1」の「D.買取価格の設定方法について」を良く見ると、「価格低減効果のあるもののみ例外」と書かれており、どうやら太陽光発電の買取価格はそれに該当するらしい。

 「再生可能エネルギーの全量買取制度に関するオプションについて」におけるケース1、3、4、5の基になるのが「参考資料2、3」である。これをみると、買取期間が15〜20年であるかのように書いてあるが、※1として「住宅用太陽光発電等については10年とした」と小さな字で明記されている。買取単価については、「42/35円等」と「42円等」の2種類に分けられる。


 つまり、 「再生可能エネルギーの全量買取制度に関するオプションについて」と「参考資料2、3」を見ると、住宅用太陽光発電の制度は以下のように読み取れる。

 【制度内容2】
  ケース1:全量買取、新設+既設、「42/35円等」、10年間
  ケース3:全量買取、新設のみ  、「42/35円等」、10年間
  ケース4:余剰のみ、新設のみ  、「42円等」   、10年間
  ケース5:余剰のみ、新設のみ  、「42円等」   、10年間


 
【制度内容1】と【制度内容2】は全く違う内容なのだが、資料の見方によって、どちらにも読み取れてしまう可能性がある。
 しかも、中には、買取価格と買取期間の良いとこ取りをして、

 【制度内容3】
  ケース1:全量買取、新設+既設、「42/35円等」、20年間
  ケース3:全量買取、新設のみ  、「42/35円等」、15〜20年間
  ケース4:余剰のみ、新設のみ  、「42円等」   、15〜20年間
  ケース5:余剰のみ、新設のみ  、「42円等」   、15年間

だと思っている人もいるようだが、明らかに「全量買取に期待しすぎるが故の」大きな勘違いである。


 提示された資料を総合すると、どうやら
【制度内容2】が正しそうである。
 (まず、ここまでついて来れましたか?)


 ところで、ケース1と3には「42/35円等」と書いてある。
 えーい、この42円と35円2つの数字はなんなんじゃぁぁああ!(笑)

 そこでさらに、

  
第4回再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム配付資料 「資料1」(PDF形式:604KB)
 =「再生可能エネルギーの全量買取制度の導入に向けた検討について

 を見てみる・・・・・・が、書いてない!


 この数字の意味にたどり着くためには、

 「再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム(第3回)
  -配付資料」の

 「
資料1 再生可能エネルギーの全量買取制度による費用試算について
 (PDF形式:824KB)

まで遡らなくてはならない。この9ページ目を読むとやっと意味が通じる。

 35円という単価は、

 「余剰買取の単価を42円とした場合に、平均的な余剰率(約60%)を用いて余剰買取と同等の経済的メリットをもたらす買取価格を仮定して全量買取を実施した場合の単価」

である。

 つまり、全量買取にする場合、余剰買取単価と同じ42円で買い取ると買取費用が莫大になってしまうので、平均的な余剰率(約60%)を用いて、設置者の経済メリットが全量でも余剰のみでも同じになるように計算すると、単価が35円になるということだ。

 全量買取の場合には、単価を42円にするのか、35円にするのか、2通りのオプションが提示されているということである。

 というわけで、
意見募集のページからはリンクされていない資料までをじっくり読み込んで、初めて太陽光発電に関する制度内容がどのようなものかが把握できた。 (皆さん、把握できましたか?)


 ハッキリ言おう!

 
ここまで遡らなければ制度内容が理解できないような意見募集の資料は、

 「書類不備だ!」

 私には、
太陽光発電に関する制度内容を意識的に分かりにくくしているとしか思えない

(10.04.19)



 さて、それでは提示された4つのオプションについて、(もちろん、太陽光発電に関する部分を)もう少し詳しく考えてみたい。
 どうやら正しそうな内容は、下記の通りだった。

  ケース1:全量買取、新設+既設、「42/35円等」、10年間
  ケース3:全量買取、新設のみ  、「42/35円等」、10年間
  ケース4:余剰のみ、新設のみ  、「42円等」   、10年間
  ケース5:余剰のみ、新設のみ  、「42円等」   、10年間

 私が真っ先に気になったのは、「余剰のみ」で「既設を対象」とするオプション(選択肢)が無いことだ。

 え、あれ?
 やっぱり、現行の「新しい買取制度」は完全に否定されているのだろうか?

 そこで、また、

 
第4回再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム配付資料
 
「資料1」(PDF形式:604KB)
 =「再生可能エネルギーの全量買取制度の導入に向けた検討について

 を見てみる・・・・・・、今度は書いてあった!


 「2-2. 買取対象(2)」には、

 「全量買取を基本とするが、例外的に住宅用太陽光については、
  
現行制度を維持するという選択肢もありうるのではないか。」

 「現行の「太陽光発電の買取制度」における買取対象に加え、
  発電事業目的の設備(メガソーラー等)も対象とすべきではないか。
  その際、国民負担に配慮した価格での買取りとすべきではないか。」

との記載がある。また、「2-3. 買取対象(3)」には、

 「A
現行制度を維持
  − 自家消費に対する省エネインセンティブが働くこと、家庭において
    エネルギーの自給が達成されること、制度の継続性が維持されること、
    配線工事が回避される等の側面がある。
  − したがって、余剰率が比較的高い住宅においては、
現行制度を維持
    
するというオプションもあり得るのではないか。」

との記載がある。

 明らかに、検討の段階では「
現行制度維持(余剰のみで既設も対象)」という選択肢が有り得るとの議論がなされていたのだが、提示されたオプションには含まれていない。

 いったい、なぜなんだろう???


 そこで、

 「
再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム第4回会合 
  議事要旨


 を見てみる。
 この段階でも、太陽光発電について、現行制度維持も有り得るとの議論がなされていたことが分かる。


・山地委員(東京大学教授)
 オプションの検討にあたっては、先行して開始しているRPS制度や
11月から実施している太陽光発電の買取制度との整理や、新エネ政策による既設設備への配慮も必要。

・横山委員(東京大学教授)
 
住宅用太陽光発電については、全量か余剰かを需要家が選択できる制度にすることも考えられるのではないか。

・柏木委員(東京工業大学教授)
 エネルギー政策上は、省エネルギーと新エネルギーを一体として推進していくことが重要。そのため、
省エネインセンティブが働くことから、住宅用は買取対象を余剰電力に限るのも一案


 それに対するお役所の回答は、以下の通り。

・渡邊新エネルギー対策課長
 住宅用太陽光について、全量・余剰の選択制というオプションを明記していないのは、まずは
対立軸を明らかにすることで、その点についての皆様の御意見を伺うため。どのオプションでもある意味両極的にしているので、中間的なものについて選択肢を設けるとそれを皆選んでしまうということもあり、この様にしたという考え方である。


 つまり、
オプションは意識的に両極的にしているから、提示された4つの中から必ず選ぶという大前提で考えなくても良い。その点についても大いに議論しようという趣旨らしい。
 従って、「
提示された4つのオプションの中でどれが良いか?」という狭い観点ばかりでなく、「提示されたオプション自体が適切かどうか」という観点の意見を大いに語るべきと考える。


 ところで、この議事要旨を読んでいて一番気になったのは下記の点だ。

・上田総括審議官
 ここまで様々な論点を挙げていただいた。これらの論点のうち、オプションという形で提示するのが困難な論点については、
議事録という形で、その論点を提示するということにさせていただきたい。

 ここまでの議論を踏まえて、資料3のケース1、3、4、5を制度のオプションとさせていただきたいと思う。
その他の論点については、議事録や参考資料に掲載するということとしたいがいかがでしょうか。

(※出席者からの異議なし)


 どうもこの上田総括審議官という人は、さっさと4つのオプションに決めてしまいたかったようなのだが、前述の

 「
資料1 再生可能エネルギーの全量買取制度による費用試算について
 (PDF形式:824KB)



 「
再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム第4回会合 
  議事要旨


も、意見募集のページの「意見の対象」の項目からはリンクされていない。


 つまり、普通に読んでいっても、「
議事録(議事要旨)」にはたどり着かず、
そこに記載されている

 「
両極的にして対立軸を明らかにすることで、皆様の御意見を伺う

という趣旨が伝わって来ないのだ。

 穿った見方かもしれないが、私には「
現行制度維持」や「全量か余剰かを需要家が選択」という論点があったことを意図的に表に出さず、意見募集の対象から外しているように思えてならない。

 私自身、太陽光発電に関しては、「
現行制度維持」や「全量か余剰かを需要家が選択」に賛成の立場であり、オプションにそれが含まれていないことは大いに不満である。自分の提出意見では、オプションの選び方自体について反対の意を唱え、オプションの再提示と意見の再募集を主張するつもりだ。


(10.05.04)


 次に気になったのは、「新設とは何ぞや?」「既設とは何ぞや?」ということだった。つまり、いつの時点から見て、新設と既設なのか、である。
 
新しい制度が出来上がった時、現在の「余剰電力固定買取制度」の対象となっていた発電所の扱いはどうなるのだろうか? と言い換えた方が直接的で良いかもしれない。

 その時点まで「余剰電力固定買取制度」の対象だった発電所に対して、そのまま現行制度を適用し続けるのならば、問題はない。

 しかし、現行制度を廃止して、現在検討中の新しい制度に一本化される場合には、現行制度の対象だった発電所を「新設」とみなすか「既設」とみなすか、2通りの解釈が考えられる。どちらの扱いになるかで全く状況が違ってくる。

 新しい制度が「新設のみ」を対象とする制度の場合に、もしも「既設」とみなされれば、その時まで48円/kWで買い取られていたのが、いきなり買電価格と同じになってしまうかもしれない。
「10年間48円/kWで買い取ります」というのを白紙にされてしまう危険性があるのだ。

 常識的にはそんなことはしないだろうと信じたいが、予断は許されない。

 2009年秋に東京電力から届いた、現在の買取制度に関する「お知らせ」には、の「料金適用期間」には、「平成21年11月の検針日から120ヶ月」と書かれているが、「なお、
料金適用期間中に新買取制度の変更等があった場合については、上記料金適用期間についても変更する場合があります。その際には改めてお知らせします」と書かれている。

 また、「契約要綱」では、余剰電力固定買取制度開始に伴う条項は「付則」という形で追加されているが、本文の1ページ目、「I 総則」の「2 要綱の変更」には、「当社は、この要綱を変更することがあります」と書かれている。

 つまり、東京電力の場合、制度が変更になったら「契約要綱」を変更可能だ。もちろん、「発電所が急に不利になるような変更は不当である」と訴訟を起こすことはできるが、原告側の主張がどこまで聞き入れられるかは未知数である。

 他の電力会社の「お知らせ」と「契約要綱」はどうなのか非常に興味深い。
 (皆さん、宜しければ、教えてください!)


 物事を悪い方にばかり考えるのは良くないのかもしれないが、
最悪の事態を想定すると、現行制度の対象になっている発電所(及び新しい制度が開始されるまでの間、今後対象になる発電所)にとっては、4つのオプションが提示されてはいるけれど、「ケース1」以外のオプションは無いのと同じだ。

 
新しい制度が出来上がった時、現在の「余剰電力固定買取制度」の対象となっていた発電所の扱いはどうなるのだろうか?

 この問いに対する答えなくして、提示された4つのオプションに対して意見を募集すると言われても、既に設置してしまった(あるいは近々設置する予定の)人は、どういう観点で意見を言えば良いのか分からない。

 判断のために必要な前提条件が分からない
のだ!

 結局、10.05.04付けの記事にも書いた通り、太陽光発電に関して言うと、オプションの提示の仕方が悪い!
 というか、
オプションを提示して意見募集できるほど、プロジェクトチーム内で十分な議論が出来ていないのではないかと思う。4月にオプションを提示しますと言ってしまったから、無理やり話をまとめて提示しましたという感が否めない。

 すでに固定買取制度が始まっている太陽光発電に関しては、もっともっと具体的な内容を提示してもらわないと困るのだ!

 というわけで、今回の結論もやっぱり、

 
オプションの再提示と意見の再募集

になってしまった。

(10.05.12)



 さて、設置者にとって、余剰電力固定買取制度(現行制度)と今回提示された全量買取制度のどちらが経済的にお得なのだろうか?

 ある仮定の基に試算をしてみた。

 一応、平成23年度(2011年度)から全量買取制度が開始される(限りなく不可能に近いと思うが・・・)と仮定し、現行制度と比較してどうなるのかを考えた。

 既設・新設ともに買取対象とし、平成22年度までに現行制度が適用されていた発電所も、平成23年度(2011年度)から全量買取に移行すると仮定した。

 @〜Cは余剰電力のみ(現行制度)、D、Eは全量買取制度である。
 @とA、BとCでは、料金プランの違いによって、2種類の異なる自家消費分の平均単価を仮定した。DとEはオプションに示されている42円と35円である。


  @余剰電力のみ(2011年3月31日以前に連系)
    余剰:48円、自家消費:28円 → 例:東京電力「おトクなナイト」

  A余剰電力のみ(2011年3月31日以前に連系)
    余剰:48円、自家消費:22円 → 例:東京電力「従量電灯B」

  B余剰電力のみ(2011年4月1日以降に連系)
    余剰:42円、自家消費:28円 → 例:東京電力「おトクなナイト」

  C余剰電力のみ(2011年4月1日以降に連系)
    余剰:42円、自家消費:22円 → 例:東京電力「従量電灯B」

  D全量買取(2011年4月1日以降に連系)
    全量:42円

  E全量買取(2011年4月1日以降に連系)
    全量:35円


 試算をするに当り、非常に重要なファクターは『余剰率』(『売電率』)である。
 発電量に対する余剰量(現行制度の発電量に対する売電量)の割合で、

  余剰率(%)=余剰量÷発電量×100

 で算出する。

 @〜Eのケースで、余剰率毎に平均買取単価を計算してみた。

余剰電力と自家消費分の平均買取単価

 紫色で示した条件では、仮に42円で全量買取になったとしても、平均単価が現行制度と同等か、それより下ってしまう(メリットが無いか損をする)。

 このサイトの掲示板での書き込みを見ても、現行買取制度(余剰:48円)が発表されて以降は、6kW〜9.9kWの大容量システムを導入した(しようとしている)人が多くなった。一般に大容量の方が余剰率が高く、6kW〜9.9kWのシステムでは、余剰率80%以上の発電所が殆どではないだろうか?

 つまり、48円余剰買取から42円全量買取に移行してもメリットがない(あるいはディメリットになる)発電所が多数存在すると予想される。


 水色で示した条件では、42円で全量買取になると、平均単価が現行制度より上がる(得をする)が、35円で全量買取になると平均単価が現行制度と同等か、それより下ってしまう(メリットが無いか損をする)。

 我が家は@のケースで、余剰率は約50%であるから、この水色の条件に当てはまる。
 ところで、1.8kWの小容量で、涙ぐましい節電努力はしていない(もちろん多少はしている)我が家でも余剰率が約50%であること、平均的な設置容量はだいたい3.5kW程度であることから考えると、多くの発電所は余剰率50%以上であると推測される。
(経済産業省の集計データでは平均が50%台のようだが、私にはちょっと信じられない。)

 つまり、35円で全量買取にした場合、現行制度に比べて経済的メリットがある発電所はほとんど無いのではないだろうか???

 すでに設置済みの発電所長さん、お宅の平均余剰率は何%ですか?
 お宅は上の表のどの部分に該当しますか?



 以前にも買いたが、35円という単価は、

 「余剰買取の単価を42円とした場合に、平均的な余剰率(約60%)を用いて余剰買取と同等の経済的メリットをもたらす買取価格を仮定して全量買取を実施した場合の単価」

である。
 そして、35円で全量買取した場合の太陽光発電の導入量(=普及促進効果)は、42円で余剰買取した場合と同等と見積もっている。

 はたして、導入量は本当に同等だろうか?

 余剰買取の場合、余剰率が高いほど経済効果は大きくなる。一般に大容量の方が余剰率が高くなるのだから、導入しようとする人の数は全量買取の場合と同じでも、余剰買取の方が1件当りの設置容量(kW)は大きくなると推測される。

 さらに、余剰率を上げるもう一つの方法は『昼間の節電』である。余剰買取の方が『節電意識の向上』が進むはずだ。


 ここまでの考察から、
35円での全量買取は、現行制度と比較して、設置者にとってメリットが少なく、普及促進効果も少ないと考えられるので、オプションとしてふさわしくないと結論づけたい。



 ところで、上記の考察では、余剰買取から全量買取に移行するための工事費を考慮していない。意見募集の参考資料には、「1軒当たり10万円程度。(50万軒で総額500億円程度)」と書かれている。

 では、工事費が10万円として、余剰買取から全量買取(42円)に移行した場合に平均買取単価の増分により、10年間で工事費の元が取れるかを試算してみた。
 下記の表は、10年で元が取れるために必要な年間発電量を示している。

全量買取用の工事費10万円を自己負担とした場合に10年で
元が取れるための年間発電量[kWh](42円全量買取に移行)


 我が家は@のケースで余剰率50%であるから、薄い緑色で示したように、年間で2,500kWh発電する必要がある。しかし、1.8kWのシステムで年間2500kWhの発電が得られるわけはない。
 つまり、平均買取単価が38円から42円に上がっても、10年間で工事費10万円を賄えず、結局は現行制度より損するのだ。
 私個人の利害で言っても、やっぱり、「全量買取、反対!!!」(笑)

 既に設置済みの発電所長さん、お宅は上の表のどの部分に該当しますか?
 10年間で10万円の工事費を賄えそうですか?

 どうやら、
工事費10万円を自己負担してしまうと、42円の全量買取に移行しても、損をするか、ほとんど経済的メリットが無くなってしまいそうである。
 本当に現行制度よりも普及効果があるのだろうか???



 「それでは、行政が工事費を負担してくれれば良いではないか?」

 という意見もあるだろう。

 しかし、「1軒当たり10万円程度。(50万軒で総額500億円程度)」である。
 実際には50万軒ではなく、60〜70万軒で総額600〜700億円と推測する。

 これこそ税金のムダ遣いで、事業仕分けの対象になるのではないか?
 全量買取のための工事費なんぞに600〜700億円もかけるのだったら、系統安定化対策(蓄電池の技術開発費、「スマートグリッド」関連の技術開発費)に充てるべきと考える。


 以上、考察したように、住宅用太陽光発電について言えば、現行制度の余剰買取から全量買取に移行した場合、金や手間隙がかかるけれども、設置者のメリットは少ない(又は無い、場合によってはディメリットになる)。

 私は今でも、現行制度(余剰買取)で固定買取期間を15年に延長するのがベストだと考えている。


 もうひとつ、
事業目的の太陽光発電も対象にすれば、企業が大量に太陽光発電を導入するという説もある。私の知る範囲では、多くの企業は5年で元が取れなければ設備投資はしないと聞いている。(違っていたらゴメンナサイ)

 定格1kW当りの年間発電量を1100kWh(このサイトで言う「日照係数」が1100)と仮定すると、年間の買取額は、42[円/kWh]×1100[kWh]=46,200[円]。5年間で231,000円。つまり、23.1[万円/kW]で購入できなければ5年で元は取れない。
 最近価格が下ってきたとは言っても、当分の間、23.1[万円/kW]で購入するのは無理だろう。はたして、
本当に企業が大量に設置するだろうか?


 さあ、皆さんのお考えはいかがだろうか?

 人それぞれ考え方は違うだろうが、是非ご自分の意見を提出されたい。
 (ヒアリングを希望する場合は5/31が締め切り)


以上(10.05.25)

「再生可能エネルギーの全量買取制度に関するオプション」
についてのヒアリングが始まる!
(10.06.27)

 「再生可能エネルギーの全量買取制度に関するオプション」について、5/31までに寄せられた意見の件数は318件・・・。

 うーん、意外に少なかったなあ・・・というのが私の素直な感想である。しかし、前回の意見募集の際には120件だったので、3倍近くに増えていることは喜ばしい。

 ヒアリングの対象者にはなれないが、6/1以降も引き続き意見募集は行っているので、まだ意見提出していない方は、是非ご自分の意見を出しましょう!


 さて、6/9、「再生可能エネルギーの全量買取制度に関するオプション」についてのヒアリングが行われた。
 その際の配布資料が、下記に掲載されている。

 
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/data/g100609aj.html

 資料がたくさんあるので、詳細は各自でご覧頂きたい。


 6/9のヒアリングでは、各種業界団体などが、それぞれの立場から、実に様々な意見を述べている。意見が多様すぎて、これはなかなか一つのオプションには決められないのではないかな? という印象を持った。

 いくつかの団体が、「太陽光発電の余剰電力固定買取制度が始まったばかりで、まだ国民に十分浸透していないし、効果や課題も検証できていないのに、全量買取は『時期尚早』である」との意見を述べていた。

 私も全く同意見である。あまりにも性急過ぎるのだ。


 前回の意見募集の際には120の意見が寄せられ、約30の団体及び個人から5回にわたってヒアリングを行った。その例から、あと何回かのヒアリングが行われると推測するが、どんな意見が出てくるか楽しみだ。

 ちょっと気になるのは、前回のヒアリングは約1ヶ月という比較的短い期間に5回行われたが、今回は6/9以降、次のヒアリングが行われていないようだ。
 ヒアリング希望者が少なくて1回だけなのか、逆にヒアリング希望者が多すぎて日程調整が難航しているのか・・・。(後者じゃないかな?)

 引き続き、注目していきたい。

(10.06.27)

「再生可能エネルギーの全量買取制度」の枠組み公表
−その内容と今後の展望は?−
(10.08.01)

 7月23日のプロジェクトチーム会合において、『再生可能エネルギーの全量買取制度』の枠組みが公表された。詳しくは下記のURLに掲載されている資料をご覧頂きたい。

 
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/data/g100723aj.html


 ヒアリングを1回しか実施していないで枠組みを公表したのには、少々驚いたが、本当に大枠が決まっただけで、具体的な制度設計はこれからやりますという内容である。新聞記事によると2012年度に制度実施を目指すとのことだ。

 昨年(2009年9月)、直嶋正行経済産業相は再生可能エネルギー全般を対象とする固定価格買取制度について、具体的な実施時期については「なるべく2年以内に、という気持ちは持っている」と語っていた。

 2年以内ということは2011年9月までだったが、2012年度(早くて2012年4月、遅くて2013年3月まで)に実施を目指すということは、当初の考えから短くて半年、長くて1年半遅くなるわけだ。
 しかし、むしろ私はそれを評価している。元々2年以内に実施するなんて無理な話であり、あくまでも『気持ち』や『思い』であって『目標』ではなかったのだと思う。鳩山さんから管さんになって、ようやく『現実的』になったきたのかな? と感じている。

 さて、23日に行われた再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム第5回会合の配付資料によると、基本的には『実用化されている全ての再生可能エネルギーを対象に、新設のみ全量買取、15〜20円/kWh、15〜20年』であるが、太陽光発電については注目すべき記載がある。


A.買取対象
 ・再生可能エネルギー全体の導入を加速化する観点から、実用化された
  再生可能エネルギーである太陽光発電(発電事業用まで拡大)、風力発電
  (小型も含む)、中小水力発電(3万kW以下)、地熱発電、バイオマス発電
  (紙パルプ等他の用途で利用する事業に著しい影響がないもの)へと買取
  対象を拡大する。

B.全量買取の範囲
 ・メガソーラーなどの事業用太陽光発電をはじめとした発電事業用設備
  については、全量買取を基本とする。
 ・
住宅等における小規模な太陽光発電等については、省エネインセンティブ
  の向上等の観点から
例外的に現在の余剰買取を基本とし、今後具体的な
  方法について検討する。(
全量買取との選択制についても今後検討

C.新設・既設の取扱い
 ・新たな導入を促進するため、新設を対象とすることを基本とするが、
既設
  設備についても
稼働に著しい影響を生じさせないという観点から、価格等
  に差をつけて買い取る等、何らかの措置を講ずる。


D.買取価格
 ・下記の太陽光発電等を除いた買取価格については、標準的な再生可能エ
  ネルギー設備の導入が経済的に成り立つ水準、かつ、国際的にも遜色ない
  水準とし、15〜20 円/kWh 程度を基本とする。また、エネルギー間の競争
  による発電コスト低減を促すため、一律の買取価格とする。
 ・今後価格の低減が期待される
太陽光発電等の買取価格については、価格
  低減を早期に実現するため、当初は高い買取価格を設定し、段階的に引き
  下げる。


E.買取期間
 ・太陽光発電等を除いた買取期間は、設備の減価償却期間等を参考にして
  設定し、15〜20 年を基本とする。太陽光発電等の買取期間については、
  10年とする。
 ・今後価格の低減が期待される
太陽光発電等については、価格低減を早期
  に実現するため当初は高い買取価格を設定し、段階的に引き下げ、
買取
  期間は10年とする。



ということで、
住宅用の小規模な太陽光発電については、例外的に現行の『余剰電力買取制度』をほぼ維持する方向のようだ。

 私としては、比較的歓迎できる内容となった。おそらく、300件以上寄せられた意見やヒアリングによって、住宅用太陽光発電を早期に全量買取にすることが『現実的』でないことが認識されたのだと考える。
 資源エネルギー庁の官僚は最初から理解していたのだと思うが、前政権とは異なる制度を作ることを第一の目的にしていた大臣・副大臣・政務官もようやく納得したのではないだろうか?

 ただし、
既設について『価格等に差をつけて』というのが気になる。
 現在、
48円/kWhで余剰電力を買取されている太陽光発電所の既得権(?)は守られるのか? この件については予断を許さない。
 私としては、『新設・既設』に関しても、住宅用の小規模な太陽光発電については、例外的に現行の『余剰電力買取』制度を維持し、『既設』の扱いも現行どおりとして欲しいと願っている。
 今後も注意深くウォッチングし、おかしな動きが出てきたら、すかさず意見メールの送信を広く呼びかけるなどの対応をしていきたい。


 ところで・・・。
 今回、この内容・このタイミングで枠組みが公表された背景には、参議院選挙の結果があるのではないだろうか?

 参議院選挙の大敗を受け、早く成果を見える形にしたかったこと、十分な議論をせずに強引に制度を変えることへの批判をやわらげたかったこと、などが考えられる。


 今後の展開については、太陽光発電以外の買取に関する制度設計にかなり時間を要すると予想される。

 2012年度・・・。
 もしかしたら、この全量買取制度は途中で宙に浮くかもしれない。衆参ねじれ国会のまま、現政権は2012年度まで衆議院解散無しに乗り切れるのか?
 個人的には近いうちに政界再編が起こっても不思議は無いと思っている。その場合、新しい政権の考える優先順位によっては、全量買取制度は後回しになるかもしれないし、違う形の新しい制度が提案されるかもしれない。

 ほぼ1年毎に首相が代わっているこの国で、2年後の予想は実に難しい・・・。

(2010.08.01)
平成22年度補正予算と平成23年度予算の事業仕分けについて
(10.11.07)


 平成22年度の太陽光発電助成金制度は12月24日で締め切られる。
 もしかしたら、締め切り前に予算枠が無くなってしまうのではないかという心配もささやかれている。

 しかし、補正予算によって、補助が延長される可能性が出てきた。

  
経済産業省関連施策・補正予算の概要:資料集(PDF形式:2.96MB)
  (10.10.27発表)

によると、【第一次補正予算額: 145億円】が予定されているらしい。


【事業の概要・目的】

 ○住宅用太陽光発電システムを設置する者に対して定額の補助を
  実施することにより、住宅用太陽光発電の導入を加速します。

 ○平成22年度当初予算による上記事業は、その申請期限が年末
  となっていました。今回の経済対策で、既存の住宅用太陽光発
  電導入支援対策基金に増資を行うことによって、その申請期限
  を平成23年3月まで延長します。

 ○市場拡大によって住宅用太陽光発電システムの価格低下を実現し、
  住宅分野での更なる大量導入を目指します。

【条件(対象者、対象行為、補助率等)】
 ・対象者
   以下の要件を満たす太陽光発電システムの設置を行う者。
    @変換効率が一定以上のもの
    A一定の品質・性能が一定期間確保されているもの
    BkWあたりのシステム価格が65万円以下のもの

 ・補助金の額:定額(7万円/kW)


というわけで、基本予算の制度をほぼそのまま延長する方針のようだ。

 12月24日以降(あるいは予算枠到達以降)、普及に急ブレーキがかかってしまうのではないかと懸念していたが、「もしも」、この補正予算通れば、大きな助けになると思われる。

 ただし、皆さんご存知のように、補正予算案はまだ審議も始められない状態であり、間に合うのか? 又は、この内容で通るのか? 予断は許されない。
 円滑な国会運営をして欲しいものだ。



 しかし、その一方で・・・。

 政府の行政刷新会議(議長・菅直人首相)は10月29日、特別会計(特会)を対象にした事業仕分け第3弾の3日目の作業を行った。

 「エネルギー対策特会」(経済産業省など共管)の「住宅用太陽光発電導入支援対策費補助金」事業について、設備導入がある程度進み補助の必要性が薄れたとして、429億円の来年度概算要求の2割圧縮を求めた。

 仕分け人から「余剰電力買い取り制度が普及すれば、手厚い補助は不要になる」との意見などが出て、補助制度の縮小が可能とした。


 おいおい、「
設備導入がある程度進み」って、目標はどのくらいで、どの程度進んだのか?

 経済産業省の資料(平成20年9月8日)によると、

 2011年〜2020年で

 ・新築戸建持家約30万戸/年の7割(約21万戸/年)に導入
 ・既築は5万戸/年に導入
   → つまり合計で約26万戸/年に導入

 2020年までに、2005年の約10倍(約320万戸)に普及させるとしている。

 2009年の麻生内閣では、約10倍を約20倍(約640万戸?→約58万戸/年?)に上方修正している。それでもCO2削減目標はマイナス15%だった。

 まず、CO2削減目標はマイナス25%のために、太陽光発電がいつまでにどのくらい普及しているべきかという目標数値はるのか?
 そして、その目標を達成するためには、年間どのくらいのペースで設備導入が必要なのか?

 その議論無しに軽々しく「
設備導入がある程度進み」なんて言って欲しくない!

 今年度の住宅用太陽光発電の導入件数は、補助金(本予算+補正予算=546.5億円)の力を借りて、20万件を少し超える程度ではないかと予測している。

 2011年度の予算が20%減になってしまったら、導入件数は減るかもしれない。
 何よりも、補正予算で計上していることと矛盾するのではないのか?


 それから、「
余剰電力買い取り制度が普及すれば」って・・・。
 「
全量買取」にするんじゃなかったの? 諦めたのならいいけど・・・。(笑)

 2011年度から買取単価が「48円」→「42円」に下る可能性が高いってことを理解した上で言ってるの???


 なんだか、やっていることが滅茶苦茶だと感じるのは私だけだろうか?

 所詮は政治的パフォーマンスなんだろうか・・・。

(2010.11.07)

 

8.2009年度の補助金政策に関する考察  ←前   目次   次→  10.「再生可能エネルギー特措法」と「平成24年度住宅用
   太陽光発電導入支援復興対策費補助金」に関する考察




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